田植えが終わったばかりの田圃は稲苗の緑がわずかに目につく程度ですが、ひと月も過ぎると風景は一変します。田圃を覆っていた水面はすっかり見えなくなり、すっかり逞しく育った稲で田圃一面が草原のようになります。この青々と広がる風景を青田といい、稲が風を受けてうねるように揺れる様子を青田波、田圃を吹き渡る風を青田風といい、これらの言葉はいずれも夏(初夏)を表す季語として詠まれています。人々の生活はその土地ならではの農産物、海産物、山の恵み、川の恵みによって営まれてきました。都会で出会う故郷の旬の食べ物は、生まれ育った土地を離れて暮らす人々にとっては故郷の季節を運んでくる風でもあるのです。