茶懐石。そう言うとどうしても構えてしまうかもしれませんが、この店に緊張は必要ありません。この道50年になる店主の中川俊行氏は、「気張らずに楽しんでほしい。お子さんも歓迎ですし、とにかく食の時間を楽しんでいただければ」と言い、ゲストをもてなします。その一方で料理はひたすらに基本に忠実。炊き合わせにせよ煮物椀にせよ、どれも出汁や食材の滋味が引き出され、優しくも力強い味わいが楽しめます。「古典的な調理法を中心にして料理をおつくりし、お客様をおもてなしたいと思っています」。骨董品や現代作家の器に盛られた料理は、一見シンプル。しかし、その奥には、この道50年になる中川氏の矜持は込められているのです。