長い年月を積み重ねてきた老舗には、その店ならではの明確な個性があるもの。たとえば1946年創業のここ【川栄】の鰻なら、ふわりととろける柔らかさがそれに当たります。秘密は白焼きの工程を経ず、生の状態から直接蒸し上げる独特な製法。初代が川魚の調理法を模してはじめたこのスタイル。焼きの工程がひとつ少ない分、柔らかく仕上げやすいものの、蒸しあがりの判断の難しさや身崩れなど、難しい問題もいろいろ。そんな難題を素材選びや技の研究などでひとつひとつクリアしながら、時間をかけてつくり上げた店の味。これぞ老舗の魅力といえる逸品。これだけのおいしさでありながら、価格は下町・赤羽らしい設定というのも、大きな魅力です。