「開店当初から同じ味です」。厨房から届いたタコスは牛ミンチを巻いたトルティーヤを油で揚げてあり、上にはみずみずしいキャベツがこんもりと。まず、何も足さずにガブリ。小麦の風味がほのかに鼻をくすぐる。牛ミンチも塩加減控えめで優しい味だ。「うちの料理は戦前にメキシコに30年間移住していたおばあさんの味。メキシコ北部にあるバハ・カルホルニア州の、メヒカリという町で親しまれていた家庭料理です。」と、三代目店主。「今でもすべて自家製です。この味は僕のルーツですから、大事にしたいですね」。異国の地で育まれたおふくろの味。半世紀以上経った今も、その美味しさは家族によって守られている。